漁港発の核藻場がブルーカーボンを広げる、5海域の成功と事業化への条件
ニュースの概要
NEDOとKAISO BANKは、全国5漁港の周辺海域で、藻場再生の起点となる「核藻場」の造成に成功したと発表しました。核藻場は、海藻が育つ場所をつくり、周辺へ広がる足掛かりにする考え方です。海水温の上昇や食害などで海藻が失われる磯焼けへの対策として、藻場を回復させ、海藻が取り込む炭素を増やすことを目指します。両者は今後、技術の改良と造成規模の拡大を進め、2030年度までに70ヘクタール、年間399トンを超える二酸化炭素の吸収・貯留を目標に掲げています。海藻を原料とする産業の供給基盤づくりにもつながる取り組みです。
引用元: 全国5漁港でブルーカーボン増大の起点となる核藻場の造成に成功しました(PR TIMES)
分析・見解
5漁港での成功は、海域ごとの再生条件を比べる出発点
磯焼けとは、海藻が減り、岩場が海藻の乏しい状態になることです。原因は海水温の上昇、ウニなどによる食害、栄養塩の不足、海底環境の変化などが重なります。そのため、海藻を植えるだけで元に戻るとは限りません。今回、複数の漁港周辺で核藻場をつくれた意義は、異なる海域で再生の足掛かりを示したことにあります。ただし、造成に成功したことと、藻場が長期にわたり自然に広がることは別です。場所ごとの水温、波当たり、海底、食害の記録を重ね、成功条件を見極める必要があります。
核藻場は小さな拠点から周辺へ広げる再生手法
核藻場は、海藻の生育を支える小さな拠点を先につくり、胞子や藻体が周囲に広がることを狙います。広い範囲に一斉に手を入れる方法より、初期の作業や資材を重点区域に集めやすい一方、拡大の速さは海流や海底地形、食害の強さに左右されます。したがって、面積だけでなく、海藻の種類や被度、季節ごとの変化、周囲への広がりを確認することが重要です。漁業者の観察を継続的な記録に結び付ければ、地域ごとに異なる管理方法を組み立てる材料になります。
70ヘクタールと399トンは測定方法も問われる目標
2030年度までに70ヘクタールを造成し、年間399トンを超える二酸化炭素を吸収・貯留する目標は、取り組みの規模を示す目安です。ただし、海藻が成長時に取り込んだ炭素のすべてが長期に海へ残るわけではありません。枯れた藻体の行方や、海底への堆積、分解されて大気へ戻る量などを区別する必要があります。面積、海藻の種類、炭素量の測り方をそろえ、第三者にも確かめられる形で示せるかが、環境価値への信頼を左右します。数値の算定方法が明確になれば、地域間の比較や資金の呼び込みもしやすくなります。
藻場再生を環境保全と原料供給の両輪で育てる
藻場には炭素を取り込む働きのほか、魚介類のすみかや産卵場所となり、沿岸の漁業を支える役割があります。一方、海藻バイオマスを産業原料として使うには、必要な量を決まった品質で継続供給する体制が欠かせません。海域の環境保全を優先しながら、採取量や利用方法を設計する必要があります。核藻場を地域に点在する拠点として育て、環境の変化を確かめながら利用を広げることが、藻場の維持と原料確保を両立する現実的な道筋です。
ビジネスへの影響
企業は藻場の面積だけでなく供給の確かさを評価する
海藻由来の食品、化粧品原料、燃料などを検討する企業にとって、造成面積の拡大は供給基盤が育つ兆しです。しかし、藻場が増えても、すぐに安定した原料調達ができるわけではありません。収穫できる時期、海藻の種類と品質、天候による変動、採取後の乾燥・保管方法を確認する必要があります。調達契約を考える段階では、年間の供給見込みだけでなく、環境への影響を抑えた採取量や、凶作時の代替手段も地域の漁業者と協議するのが有効です。まずは小規模な試験利用を行い、原料の性質と加工費を確かめてから長期契約へ進む方法が現実的です。