微細藻類市場は2034年へ拡大、食品から燃料まで勝ち筋はどこか
ニュースの概要
市場調査会社のFortune Business Insightsが、微細藻類の世界市場について2034年までの成長を見込むレポートを公表した。微細藻類は、ユーグレナやスピルリナ、クロレラのように水中で光合成を行う小さな生物の総称だ。栄養補助食品、飼料、化粧品原料、バイオ燃料と用途が広く、市場拡大の期待が語られてきた。今回の予測も、健康志向の高まりと脱炭素の流れを背景に、複数の用途が同時に伸びる姿を描いている。ただし市場規模の数字は、どの用途を含めるかで大きく変わる。数字そのものより、何が成長を支えるのかを読む必要がある。
引用元: 微細藻類市場規模、シェア |世界成長レポート [2034](Fortune Business Insights)
分析・見解
市場規模の数字は用途ごとに中身が全く違う
微細藻類の市場予測は、調査会社によって幅がある。理由は単純で、食品、燃料、化粧品といった性格の違う市場を一つの箱に入れているからだ。
たとえばスピルリナやクロレラは、すでに数十年の販売実績がある。一方、藻類由来の航空燃料は、ようやく実証段階を抜けつつある段階だ。同じ「成長」でも、確実に積み上がる部分と、期待で膨らんでいる部分が混在している。レポートを読むときは、現時点の売上の大半がどの用途から来ているかを先に確認したい。
収益を支えているのは単価の高い食品と健康素材
現在の収益の中心は、サプリメント、機能性食品、色素や抗酸化成分などの高付加価値素材である。アスタキサンチンやDHA、フィコシアニンのように、1キロあたりの単価が数万円を超える成分があるためだ。
培養コストが高くても、単価が高ければ事業として成り立つ。ここが燃料との決定的な違いだ。燃料は1リットルあたり数百円で売る商品であり、同じ培養コストでは到底採算が合わない。だから当面、藻類ビジネスの主役は「少量で高く売れる成分」になる。
燃料は培養コストが下がるまで主役になれない
航空燃料(SAF)への期待は大きい。藻類は油脂を細胞内に蓄え、単位面積あたりの収量が大豆やパームよりはるかに高いとされる。
しかし、屋外の池や閉鎖型の培養槽を維持する費用、収穫と乾燥にかかるエネルギーが重い。過去に米国で複数の藻類燃料企業が、石油価格の下落で撤退した例がある。燃料単独では難しく、食品用の成分を先に取り出し、残りを燃料にする「段階利用」でコストを分け合う設計が現実的だ。
見落とされがちな強みはCO2を原料に変えられる点
藻類は光合成でCO2を取り込む。工場や発電所の排ガスを培養に使えば、排出削減と生産を同時に進められる。
ここでの独自の見方は、CO2を「処理費のかかる廃棄物」から「安く手に入る原料」へ変える発想が、収益の形を変えうるという点だ。排出量取引や炭素税が強まるほど、藻類を持つ企業には、売上とは別に環境価値が付く。価格競争で劣る燃料用途でも、この環境価値を含めて初めて採算が見える。
ビジネスへの影響
参入前に決めるべきは用途ごとの採算ライン
事業の検討では、まず狙う用途の採算ラインを数字で置く。サプリや化粧品原料なら、1キロあたりの売価に対する培養と抽出の原価を見る。燃料なら、リットルあたりの目標原価と、現状との差を明確にする。
成長市場という言葉だけで投資を決めると、燃料のように時間のかかる領域に資金が固定される。まずは高単価の成分で売上を作り、そこで得た培養の知見を燃料やCO2活用に広げる二段構えが堅実だ。
自社培養にこだわらず、組む相手を先に探す
培養は温度、光、栄養、雑菌対策など管理項目が多く、経験の差が収率に直結する。ゼロから設備を持つより、すでに培養実績のある企業との原料調達や共同開発のほうが、立ち上がりは早い。
食品、化粧品、飼料の事業者は、藻類原料を使った新商品を小ロットで試せる。国内外の藻類企業は供給先を探しているため、価格や品質基準を交渉しやすい時期でもある。
環境価値を売上に含める計算を用意する
排ガスのCO2を培養に使う場合、削減量を数値化して社内の脱炭素目標や取引先への報告に使える。補助金や認証制度の対象になる可能性もある。
意思決定者は、製品の売上だけでなく、CO2削減量、補助金、ブランド価値を合算した採算表を作るとよい。この表があれば、燃料のように単体では赤字に見える用途でも、事業として続ける根拠を社内外に示せる。