光を内側から当てる藻類培養、乾燥重量11.5g/Lが示す量産の現実味

光を内側から当てる藻類培養、乾燥重量11.5g/Lが示す量産の現実味

ニュースの概要

紅色微細藻類Cyanidioschyzon merolaeを使い、複数の培養方式を同じ条件で比べた研究が報告された。培養槽の内側にガラス製の導光部材を差し込み、光を中から当てる内部照明型フォトバイオリアクターが、最も高い生産性を示したという。最終的な乾燥細胞重量は1リットル当たり11.5グラム、1日1リットル当たりの収量は1.07グラムで、平板型など他の方式を上回った。得られた藻体は炭素が約47%、デンプンが約21.5%を占め、色素やたんぱく質も含む。藻類培養で長く課題だった光の届きにくさを、装置の構造で和らげた成果といえる。

引用元: 内部照明型フォトバイオリアクターで紅色微細藻類のバイオマス生産性が向上(Bioengineer.org)

分析・見解

藻類培養の壁は、光が奥まで届かないこと

藻類は光で育つ。ところが培養液は、細胞が増えるほど濁る。濁った液体の中では、光は表面から数センチも進まないうちに吸収されてしまう。外側から照らす方式では、壁際の細胞だけが光を浴び、中心の細胞は暗闇に置かれる。これが高密度培養の最大の壁である。

平板型は液を薄くして光を届かせる工夫だが、薄くすれば一台で扱える液量が減る。チューブ型は長く巻く必要があり、設置面積が大きくなる。今回の内部照明型は、発想が逆である。光源の代わりになる導光部材を液の中へ入れ、光を内側から広げる。光の通り道を短くすることで、濃い培養液でも全体が明るくなる。

11.5g/Lと1.07g/日が持つ意味

数字を整理しておく。最終乾燥重量は1リットル当たり11.5グラムである。空間時間収量(=一定の容積で一日にどれだけ作れるか)は1日1.07グラムだ。工場の稼働率に近い指標で、装置の大きさと収量を結びつけて見られる。

一般的な屋外の開放池では、乾燥重量は1リットル当たり1グラム前後にとどまることが多い。閉鎖型の装置でも数グラムが目安とされる。11.5グラムは、同じ容積から取れる量が数倍になる水準だ。同じ生産量なら、槽を小さくできる。槽が小さければ、温度管理も衛生管理もしやすい。

なお、この株は高温で酸性の環境を好む。そのため雑菌が入りにくく、閉鎖系との相性が良い。内部照明で濃く培養できれば、この長所はさらに活きる。

炭素47%、デンプン21.5%という中身の価値

量だけでなく、中身も重要だ。炭素含有率は約47%、デンプンは約21.5%だった。デンプンは発酵原料にもなり、食品や素材の用途も広い。一方で、紅色藻はフィコシアニンのような青い色素を持つ。食品の着色料や化粧品の原料として、すでに高い値段で取引されている。

つまり一つの藻体から、たんぱく質、デンプン、色素を段階的に取り出せる可能性がある。単一の製品に頼らず、複数の売り先を持てる。これは藻類ビジネスの採算を考える上で大きい。

研究室の成果が工場に届くまでの距離

課題も明確である。ガラス製の導光部材は、洗浄や破損のリスクがある。槽が大きくなるほど、光源の本数と電気代が増える。発光ダイオードの効率は上がっているが、電力は依然として運転費の大きな部分を占める。

今回の比較は条件をそろえた研究であり、数千リットル規模でも同じ性能が出るかは別の問いだ。ただ、光の供給を装置の形で解くという方向性は、今後の設計の標準になり得る。

ビジネスへの影響

小型で高密度という設備投資の新しい選択肢

藻類事業の初期投資は、培養槽の大きさでほぼ決まる。同じ収量を小さな槽で得られるなら、土地、建屋、配管、洗浄設備のすべてが小さくなる。屋内の工場やビルの一角でも設置でき、天候に左右されない。都市近郊で原料を作り、輸送費を抑える形も考えられる。ただし電気代が増えるため、再生可能エネルギーの余剰電力や、工場の排熱と二酸化炭素を使える立地が有利になる。

一つの藻体から複数の製品を取り出す設計

色素は高単価で、デンプンとたんぱく質は量が出る。この組み合わせなら、色素の販売で利益を確保し、残りを飼料や素材へ回せる。事業計画では、単一製品の売上ではなく、抽出工程ごとの歩留まりと買い手を並べて評価したい。食品や化粧品は、規制対応と安全性データが先に必要になる点にも注意が要る。

導入を検討する企業が確認すべき三つの点

第一に、導光部材の洗浄方法と交換頻度である。第二に、槽を大きくしたときの電力原単位(=製品1キログラム当たりの電気使用量)である。第三に、自社が狙う用途で必要な純度と価格である。小規模な試験設備で、この三点の実測値を先に取ることが、投資判断の近道になる。

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